公認会計士は転職が多い職種です。実際に、将来的に転職を考えており、公認会計士の転職事情が気になる方も多いのではないでしょうか。
公認会計士のほとんどはbig4などの監査法人からキャリアをスタートさせますが、難関資格だけあって公認会計士の活躍フィールドは、一般企業の経理、コンサル、投資ファンドなど幅広く存在しています。
そこで、本記事では公認会計士の転職事情や公認会計士が監査法人を離れる理由について詳しく解説します。
また、実際に転職を考えられている方に向け転職エージェントの選び方についても解説させて頂きます。
監査法人を離れる理由
公認会計士の本業は監査であり、大半の公認会計士は監査法人からキャリアをスタートさせます。
しかしながら、公認会計士は転職が多い職種と言われ、監査法人の就職後7-8年後には50%以上が転職するとも言われています。
その多くは、一般企業の経理、コンサル、独立などへの転職で、監査法人を離れていく人が多いのが実情です。
なぜ、監査法人を離れる公認会計士が多いのでしょうか?その理由について解説していきます。
キャリア・経験のため
キャリア・スキルアップを理由に監査法人から転職を考える人は多いです。
既にご紹介したとおり、公認会計士の活躍フィールドは監査に限られず、一般企業の経理、コンサル、投資ファンドや独立開業など幅広いキャリアパスを有しています。
監査法人では主に監査業務のみに従事することになるため、5-10年など一定の経験を積んだあとは、異なる職種へ転職して更なるスキルアップを考える方も多くいます。
また、監査法人内で最も高い職位のパートナーまで昇進できる枠はごく一部に限られるため、監査法人内での昇進を諦めて、別の道を模索するために転職を考えるケースもあります。
独立のため
公認会計士の方で将来的に独立を考えている人は少なくありません。
監査法人で、一定の経験を積み人脈をつくったのちに、独立開業のために監査法人を退職していくのです。
監査法人からそのまま独立する人もいれば、税務やコンサルのスキルを求めて、将来的な独立を見据えて税理士法人やコンサル会社に転職するケースも多いです。
やりがいのため
監査業務は業務量も多く大変な割に、やりがいがないと言われることも少なくありません。
監査の仕事は社会のインフラとして不可欠なものですが、直接クライアントなどに喜んでもらえる場面も少なく、むしろ資料提出の依頼や質問などで嫌がられることも多いのが実情です。
こういった現場に直面して、監査法人でのやりがいを感じられなくなり、やりがいのある仕事を求めて転職を考えるケースも少なくはありません。
ワークライフバランス充実のため
社会からの監査に対する期待水準の高まりから、近年、監査業務の作業量は年々増加しています。
この背景もあって、監査法人に勤める公認会計士のなかには、連日の残業や休日出勤など激務に悩まされている人も少なくありません。
また、監査業務は年度や四半期ごとの決算のタイミングが繁忙期となり、急激に業務量が増える構造のため、年間を通して安定的に働くことが難しく、家庭や趣味に時間を費やすことが難しいことも、監査法人を離れる理由の一つとなっています。
公認会計士の転職、求人事情
公認会計士が監査法人を離れ転職する理由をご紹介しましたが、実際の転職事情はどうなっているのでしょうか。
公認会計士の需要や転職先など公認会計士の転職事情について詳しく解説していきます。
公認会計士の需要は?
転職市場において公認会計士は需要の高いキャリアの一つです。
監査法人においては、近年の監査基準の厳格化などで業務量が増加している一方で公認会計士試験合格者がそれほど増加しておらず、人手不足の状況が慢性化しつつあります。
そのため新規採用のみならず中途採用も積極化している状況にあります。
また事業会社では、会計基準の高度化・事業の複雑化を背景に、組織としての会計・財務能力の向上が求められる環境にあります。
それに対応すべく、高度な会計知識を持った経理・財務ポジションの人材を求めており公認会計士への需要は高く、転職において最強の資格ともいえます。
そのほかIPO(株式公開)、M&Aの事例の増加を背景に、コンサル会社や事業会社でも内部の専属部隊として公認会計士人材を求める声は高まっている状況です。
転職のタイミングは?40代、50代でも転職できる?
公認会計士の転職タイミングで最も多いと言われているのは、次のとおりです。
- 修了考査の合格後
- 入社後5年目~8年目
- マネージャー昇格後
1.修了考査の合格後
公認会計士の転職タイミングとして最初に挙げられるのは、修了考査合格のタイミングです。
公認会計士資格を取得するには、公認会計士試験合格後に実務補習と2年の実務経験の要件を満たす必要があります。
実務補習は原則3年にわたって実務補習所という予備校のような場所で所定の講義を受ける必要があります。
平日の夕方~夜にかけて開かれる講義も多いですが、監査法人であれば融通を利かせてくれるのが一般的です。
また、修了考査の直前には試験休暇を取得できたりと、公認会計士資格を取得しやすいという大きなメリットがあります。
そのため、最初の3年間は監査法人で働き、修了考査合格後は転職を考えている人も多いのです。
2.入社後5年目~8年目
次に挙げられる転職タイミングは、監査法人への入社後5年目~8年目のタイミングです。
20代半ばで監査法人で就職した場合には、30歳前後に差し掛かるタイミングであり、転職市場での価値が最も高まるタイミングの一つでもあります。
また、監査法人内ではマネージャー昇格前の段階であり、マネージャーの激務を目にして転職を考える人も少なくないため、転職者が増えるタイミングとなっています。
3.マネージャー昇格後
最後は、マネージャー昇格後のタイミングです。監査法人内で管理職であるマネージャーに昇格してから転職をすることで、管理職など一定のポジションでの転職先を探すやすくなります。また、マネージャー昇格直後は業務量や責任など負荷が増加する一方で、給料は昇格前と変わらない場合も少なくありません。そのためマネージャー昇格後も転職する人が増えるタイミングとなっています。
40~50代での転職は可能?
公認会計士は40~50代でも比較的転職がしやすいと言えます。一般に転職市場で価値が高まるのは30代と言われ、40代~50代での転職は難しくなると言われますが、公認会計士の場合は高年代でも比較的転職先が見つかりやすいと言われています。
ただやはり、30代中盤以降になると年収が1,000万円を超える方もでてくるため、年収の問題で転職先の選択肢は少なくなる傾向はあります。
20-30代であればポテンシャル採用があり、未経験業界であってもM&A仲介、投資銀行、PEファンド等の選択肢もありますが、30代中盤以降となると、一部のコンサルやFAS、事業会社などに選択肢がせばまるでしょう。
公認会計士のキャリアプラン、転職先は?
公認会計士の転職事情を紹介してきましたが、転職・キャリア形成を考えるうえでどのような選択肢があるのでしょうか。
転職におけるハードルの高さやおすすめのキャリアプランとともにご紹介していきます。
一般企業(経理・財務部門)
監査法人での経験も直接的に活かしやすく比較的転職しやすい職種です。
事業会社が公認会計士を採用する場合、経理・財務の体制を強化したいと考えていることが多いため、専門的な会計知識が活かせる状況であるケースが多いでしょう。
また、監査法人に勤めていたということで、会計監査対応を任されることも少なくありません。監査法人での経験を強みと活かしやすい転職先といえるでしょう。
事業会社の規模や経理体制によって勤務環境は大きく異なるため、入念に下調べをしたうえで転職先を探すことをお勧めします。
一般企業(経営企画・M&A部門)
大手事業会社やスタートアップ企業の経営企画・M&Aポジションも公認会計士に人気の職種の一つです。
スタートアップ企業の場合はCFOとして招かれる場合もあります。
会社のビジネスや意思決定に直接関与する職種のため、やりがいが感じられやすい仕事といえます。
また、経理・財務部門と比較すると日次定例的な仕事よりも突発・単発的な仕事が多くなる傾向があり、刺激があり飽きにくい職種でもあります。
その反面、会社や時期によっては残業が多くなる場合もあり、ご自身が興味のある分野・仕事内容を明確にしたうえで、ニーズにあった転職先を探すのがよいでしょう。
一般企業(内部監査部門)
内部監査部門も公認会計士へのニーズが高い職種の一つです。監査法人では数多くの企業の内部統制や内部監査体制を直接目にすることができるので、その経験を活かすことができます。企業の内部監査部門は、問題・不祥事等が発生しなければ、年間を通じた監査計画に基づいて定例的に業務を行うため比較的安定した仕事といえます。
その一方で、買収企業とのPMIや内部統制を抜本的に見直すプロジェクトリーダーやチームの一員として企業に招かれるケースもあります。
コンサルタント会社
コンサルといっても幅広いですが、大きく区分してFAS系のコンサルと戦略系コンサルに分けることができます。
FASとは、ファイナンシャルアドバイザリーサービスの略で、財務に関して専門的な助言を行うサービスのことです。
具体的には、M&A、税務、企業再生などの分野があります。公認会計士の強みである会計知識をそのまま活かすことができるため、親和性の高い職種でもあります。
FAS系コンサル会社は大小さまざまな存在しており、給与や待遇面もピンキリです。
戦略系コンサルは企業の経営層に対して、事業計画策定や新規事業立案などサポートの仕事を行います。
会社全体の売上や利益を増やす経営に直結する仕事ですので、非常にやりがいのある仕事といえます。
その反面、成果に対してシビアな業界でもあり、優秀な人材も多く自己研鑽が強く求められる仕事でもあります。
能力によっては非常に高い報酬を得ることができるチャンスもあるなどのメリットもあります。
投資銀行(国内/海外)
投資銀行とは、個人や企業に変わって金融取引を行うサービスのことです。
実際の業務としてはM&Aに関するFAコンサルに従事することが一般的です。
会計・ビジネスに関する知識の他にも、金融の素地が求められます。
そのため、公認会計士が転職するには20-30代前半など年齢が若い段階で未経験でのポテンシャル採用を目指すか、銀行や証券会社などの金融に関する知識・経験を蓄積したうえで転職を目指すのがよいでしょう。
また、激務である反面、給与は高水準の特徴があります。
PEファンド
PEファンドは金融機関等から資金を調達して、ベンチャー企業などに投資して利益を得ることを目的とする事業体です。
PEファンドで働く場合、自分自身が資金を動かして投資先企業のビジネスの成功を導く必要があるためやりがいを感じやすい一方で、非常にプレッシャーの強い仕事といえます。PEファンドはほとんど投資銀行や戦略コンサル出身者で構成されます。
監査法人経験のみでの転職は一般的に厳しく、コンサル等のキャリアを経た上で目指すのがよいでしょう。
その他
上記のほかにも、専門商社や外資系企業、公務員などのほか、英語力を活かし米国など海外に足を踏み出すなど、幅広い選択肢もあります。
男性や女性などの性別、学歴などにも左右されにくいのが公認会計士の資格の強みでもありますので、自分に合ったキャリア形成を早い段階から検討することをおすすめします。
転職エージェントの選び方
転職を考えるうえで、転職エージジェント選びは非常に重要です。こちらでは、公認会計士の転職サイトやエージェントの選び方について解説していきます。
転職サイト・エージェントの選び方
転職サイトやエージェントを選ぶうえで需要な点は次のとおりです。
- 公認会計士の求人を多く扱っているか(量)
- 自分の目的や状況に合った求人を扱っているか(質)
- 専門的な知見からのアドバイスを受けられるか(サポート)
転職エージェントを選ぶうえで、最も重要な点は、公認会計士の求人の取扱数が多いかという点とそれが自分に合っているかという量と質の2点でしょう。
また、それに加えて、専門的な知見からのアドバイスを受けることができるなど、サポート体制が十分かという3つの視点から、自分に合った転職サイトやエージェントを利用して転職先を探すことをお勧めします。
特化化型エージェントか総合型エージェントか?
転職エージェントには特化型エージェントと統合型エージェントの2つがあります。
これらのエージェントにはそれぞれメリット・デメリットがあるため、併用して転職先を探すことをおすすめします。
特化型エージェントとは、専門的な職種に特化したエージェントであり、その分野での求人を専門的に取り扱っています。
一方で、統合型エージェントは業界や職種など関係なく、幅広く求人を取り扱っている転職エージェントです。
特化型エージェントは、業界に特化したエージェントはのため企業の内部情報に詳しい、最新の業界の転職市場動向の情報が知れる、サポートが充実しているなどのメリットがあります。
その反面、取り扱っている求人数は多くない、幅広い業界の求人情報は得にくいなどのデメリットがあります。
統合型エージェントは、様々な業界の求人を取り扱うエージェントのため、求人数が豊富、取扱っている業界や職種の幅が広い、運営が大手企業の場合が多いなどのメリットがあります。
その反面、転職サポートの利用者が多く事務的な対応になることもある、業界の情報は特化型エージェントに比べると乏しいなどのデメリットもあります。
なお、「マイナビ」は統合型エージェント・サイトですが、「マイナビ会計士」という特化型エージェントサイトも運営しており、同じエージェントで統合型と特化型を兼ねているケースもあります。
まとめ
本記事では、公認会計士の転職事情について解説してきました。
公認会計士は難関資格だけあり活躍フィールドは幅広く存在しており、転職が活発におこなわれています。
本記事が、公認会計士の転職を考えられている方や転職先を探している方の転職が失敗とならないよう、ご検討の一助になれば幸いです。