「公認会計士にはどの学部学科が向いているの?」
「公認会計士は文系学部のイメージがあるけど、理系学部の人が目指すのは難しい?」
このような疑問をお持ちの方も多いと思います。
本記事では公認会計士を目指すにあたって有利な学部学科について解説していきます。
解説にあたっては、公認会計士試験への影響と合格後のキャリアへの影響のそれぞれについて実態をお伝えさせて頂きます。
公認会計士に向いている学部は文系or理系?
公認会計士は会計の専門家であり、会計分野でもトップクラスの取得難易度を誇る難関国家資格です。会計分野の仕事ということで、文系のイメージをお持ちの方も多いと思います。
しかしながら、全ての公認会計士が文系出身というわけではなく、理系出身の公認会計士も少なからず存在しています。
では、文系学部と理系学部のどちらが公認会計士に向いているのでしょうか。この点について、解説していきます。
経済・経営系学部の出身が多い
公認会計士は、一般に経済学部、経営学部、商学部などの文系学部の出身者の割合が多いと言われています。
ただし、合格者の出身学部についての具体的な統計は存在していないため、大学の学部学科に関する詳細は不明となっています。
経済・経営系学部では授業の一環として、「簿記」や「財務会計」を学ぶことが多いです。
「簿記」や「財務会計」は、公認会計士が専門領域とする会計分野の学問であり、こういった授業の機会から、公認会計士の存在を知り興味を抱くきっかけとなることも少なくないようです。
実際に公認会計士として働く人に尋ねてみても、半数以上が経済・経営・商学部の出身の人という体感です。
そのほかにも、文系では法学部出身の公認会計士も比較的多い印象です。公認会計士は、会計のほかにも、会社法や金融商品取引法などの法律系分野にも強く関連しているため、その関係から法学部から公認会計士を目指そうという人も一定数存在するのでしょう。
理系学部出身の公認会計士も一定数いる
公認会計士の出身学部は、経済、経営、商学部などの出身が半数以上を占めている印象ですが、理学、工学、農学部などの理系出身の公認会計士も一定数存在しています。
上述のとおり、公認会計士の出身学部に関する信頼できる統計は存在していませんが、体感としては10人に1人程は理系出身者がいる印象です。
理系出身者が多くない理由の一つとしては、そもそも公認会計士という職業の存在を耳にする機会が少ないことが挙げられます。
公認会計士は、通常の生活のなかであまり耳にする機会が多くはない職業です。実際に大学生に問うても、名前だけは聞いたことがあっても、どのような仕事をしているのかまで答えられる人は少ないでしょう。
理系学部では、なおさら公認会計士について知る機会は限定されており、公認会計士を目指すことを考えることは非常に限られていると考えられます。
また、理系学部のゼミは文系学部のゼミと比べて、拘束時間が長い傾向にあることも理由の一つとして挙げられます。
公認会計士試験受験者の多くは、大学在学中に専門学校とのダブルスクールをして、公認会計士を目指している人です。
理系出身者は、ゼミの拘束時間もあり、相当程度の勉強時間を確保する必要がある公認会計士試験に挑戦しづらいことも理系出身の公認会計士が少ない理由となっているのです。
文系学部と理系学部のどちらが向いている?
公認会計士は圧倒的に文系学部の出身者が多いとお伝えしましたが、公認会計士に向いているのは文系学部と理系学部のどちらなのででしょうか。
これについては、文系と理系のどちらが明確に公認会計士に向いているということはありません。
言い換えると、文系と理系のどちらも独自の強みを持っているといえます。
多数を占める文系の経済・経営・商学部系の出身であれば、金融・経済・経営などを大学で学んでおり、公認会計士の業務にも強く関連するビジネス感覚に優れている傾向があると言えるでしょう。
また、公認会計士は会計基準や法律とも切っては切り離せない職業であり、法学部出身であれば、その法律知識を十分に活かす機会があるといえます。
一方で、理系学部の場合、公認会計士の業務に直結する知識を学んでいることは少ないと考えられます。
では、理系が公認会計士に向いていないのかというと、そんなことは全くありません。
理系出身者は、会計や経済への馴染みが薄い傾向にありますが、論理的思考力に優れている人が多い傾向があります。
公認会計士には高いレベルでの論理的思考力が求められるため、理系学部出身者の論理的思考力は非常に強力な武器となります。
理系学部の授業は文系に比べても、授業や講義のなかで論理的な思考力を求められる場面が多いです。
そのため、自然と論理的思考力が身につき鍛えられているのでしょう。
文系と理系ではそれぞれ独自の強みがあることがお分かりになったでしょうか。
文系出身者はその経済・ビジネス感覚や法律知識を活かすことで、理系出身者は論理的思考を活かすことで、それぞれ優れた公認会計士として輝くことができるでしょう。
公認会計士試験に有利な学部
公認会計士には文系学部出身者が多いものの、理系学部出身者も一定数存在しており、それぞれが独自の強みを発揮していることについて解説してきました。
では、公認会計士試験を受験するにあたり、合格に有利な学部学科はどの学部なのでしょうか。
この点についても解説していきたいと思います。
受験資格は?
公認会計士試験の受験資格は特別存在していません。
公認会計士の受験資格は、以前は、大学での単位取得要件など厳しく制限されていました。
しかし、現在は、受験資格に制限は設けられておらず、性別、年齢、学歴を問わず、誰でも試験を受けられる試験となっています。
そのため、公認会計士試験の受験にあたり、大学の学部学科の要件もなく、文系・理系を問わず問題なく受験することができます。
試験科目は?
公認会計士試験は短答式試験と論文式試験の2段階式の試験となっています。
短答式試験の合格者が論文式試験を受験することができ、論文式試験を合格した人が公認会計士試験合格者と呼ばれます。
それぞれの試験における試験科目は以下のとおりです。
試験 | 試験科目 |
---|---|
短答式 | 財務諸表論、管理会計論、監査論、企業法 |
論文式 | 【必須科目】会計学(財務諸表論、管理会計論)、監査論、企業法、租税法 【選択科目】経営学、経済学、民法、統計学より1科目を選択 |
試験科目に強く関連しているのは商学・経営系の学部
受験資格に、大学の学部などでの制限がないことは既にご紹介したとおりです。
受験資格への制限はありませんが、公認会計士試験において所属学部による有利不利はあるのでしょうか。
公認会計士試験の試験科目に最も強く関連しているのは商学・経営学部などの会計分野を学ぶことができる学部でしょう。
公認会計士試験の試験では「財務会計論」、「管理会計論」、「監査論」、「企業法」、「租税法」が必須科目となります。
このうち最も配点が多く重要性が高い科目が「財務会計論」です。
公認会計士試験の突破には、避けることのできない対策必須科目であり、この「財務会計論」に加え、「管理会計論」や「監査論」などを大学の講義で学ぶ機会がある商学・経営系の学部は、他の学部に比べると一定の優位性があると言えるでしょう。
またこれに加え、選択科目である「経営学」、「経済学」なども、強く関連するため、知識の全くない状態から勉強を始める必要がないという点で、大きなメリットがあると考えられます。
理系学部も強みを生かせる科目
公認会計士試験に最も強く関連する学部は、商学・経営系の学部とご紹介させて頂きました。
では、理系学部出身者は、商学・経営系の学部出身者に対し、公認会計士試験に不利なのでしょうか。
やはり、学部で学ぶ機会が少ないということで、一定のディスアドバンテージはないとは言えないかもしれません。
しかしながら、文系学部にはない理系学部ならではの強みを活かして、試験を突破することは可能と思います。
まず、会計はご存知の通り数字を扱う分野です。
公認会計士試験ので高度な数学の知識が求められるものではありませんが、文系出身者は数字や計算を不得意とする人も少なくありません。
理系出身者は、数字を取り扱うことに関し、文系出身者よりも優れている傾向があると考えられ、理系出身者の強みを大いに発揮できることでしょう。
また、試験全般を通じて、最も求められる能力は論理的思考力です。
問題を論理的に整理・解釈し、迅速に処理する能力が強く要求されます。
この点において、理系出身者は論理的思考力に長けた人が多い傾向にあり、文系出身者に対し、優位性を発揮できる重要な点ということができます。
公認会計士試験は、試験科目に強く関連しているのは商学・経営系の学部であることを紹介しました。
その一方で、理系学部出身者は計算能力や論理的思考力を強みとして発揮することで、文系学部の出身者に対しても優位性を発揮することは不可能ではないことをご紹介させて頂きました。
出身学部の合格後のキャリアへの影響
公認会計士の試験時における専攻学部の影響についてご紹介してきました。
では、試験合格後、公認会計士として働く際に、出身学部によるキャリアへの影響はあるのでしょうか。この点について解説させて頂きます。
合格後のキャリアへの影響はほとんどない
結論からいいますと、試験合格後に公認会計士として働くにあたり、出身学部によるキャリアへの影響はほとんどありません。
公認会計士の業界は、日々の研鑽による個人の能力が物をいう世界です。出身学部により、著しく有利な影響を受けることは、ほとんどないといっていいでしょう。
公認会計士が行うことのできる業務は、財務諸表監査のみならず、税務業務、コンサル業務、記帳代行業務など会計分野を基盤として幅広いです。
また、キャリアプランとしても、監査法人、税理士法人、事業会社、投資ファンド、官公庁、外資系コンサル会社、独立開業など様々な選択肢が用意されています。
ご自身の望むキャリアプランに沿って研鑽に努めることで、出身学部などにとらわれることなく、いくらでも望む未来を切り切り拓いていくことができるのが公認会計士の魅力といえます。
公認会計士試験に強い大学は?
最後に、公認会計士に強い大学についてご紹介させて頂きます。
令和3年度の大学別公認会計士合格者数ランキングは次のとおりです。
順位 | 大学 | 合格者 |
---|---|---|
1位 | 慶應義塾大学 | 178人 |
2位 | 早稲田大学 | 126人 |
3位 | 明治大学 | 72人 |
4位 | 中央大学 | 65人 |
5位 | 東京大学 | 58人 |
6位 | 立命館大学 | 49人 |
7位 | 京都大学 | 41人 |
8位 | 神戸大学 | 38人 |
9位 | 大阪大学 | 36人 |
10位 | 一橋大学 | 35人 |
慶應義塾大学が第1位にランクインしており、合格者の数をみても圧倒的に多い事が分かります。
第2位以降では、早稲田、明治、中央、東大が続いています。
10位以降のランク圏外では、法政大学、同志社大学、関西大学なども例年合格者数の多い大学です。主に偏差値の高い大学が上位に名を連ねる傾向にあり、高学歴者に公認会計士志望者が多い傾向があることがわかります。
大学によっては、資格予備校の連携や学内スクール、専用コースの設置など公認会計士試験の合格に向けたサポートを充実させている大学も多くありますので、公認会計士を目指す方が大学選びをする際には、こういったサポート体制も調べてみることをおすすめします。
まとめ
本記事では公認会計士を目指すにあたって有利な学部学科について解説してきました。
公認会計士試験への影響という点では、商学・経営系の学部学科は試験科目に強く関連しているため、有利な点があることについてご紹介しました。一方で、理系出身者に関しても、計算能力や論理的思考力などを活かすことで、文系学部の出身者に負けない強みを発揮できることをお伝えさせて頂きました。
出身学部によるキャリアへの影響はほとんどないことについて解説させて頂きました。公認会計士の業界は、日々の研鑽による個人の能力が物をいう世界であり、出身学部などにとらわれることなく、いくらでも望む未来を切り切り拓いていくことができるのです。
このように、大学の学部学科による公認会計士試験への影響と合格後のキャリアへの影響のそれぞれについて実態をお伝えさせて頂きました。ご理解の一助となれば幸いです。