公認会計士は、医師、弁護士に並ぶ三大国家資格の一つであり難関試験を突破する必要があります
公認会計士の資格に興味はあるけれども、「公認会計士を目指すメリットって何?」、「公認会計士の将来性は?」という疑問をお持ちも多いのではないでしょうか。
本記事では、公認会計士を目指すメリットや公認会計士資格の価値や将来性について詳しく解説させて頂きます。
これから公認会計士試験の合格を目指すか迷っているという方に特におすすめの内容です。
公認会計士とは
そもそも公認会計士がどういう仕事かご存知でない方も多いと思います。
ますは、公認会計士の仕事内容についてご紹介します。
公認会計士はその名の通り「会計」の専門家です。
そして「財務諸表監査」業務というものが、会計系の国家資格である公認会計士だけが実施すること独占業務として法律で定められています。
財務諸表監査とは、簡潔に説明すると、企業が外部に公表する決算書が正しいものかをどうかを監査し証明する仕事です。
一定の大企業は四半期や年度ごとに財務諸表(一般に決算書と呼ばれるもの)を外部に公表することが法律により求められています。
この財務諸表が不正や誤りのない適正な財務諸表であることを証明する役割を公認会計士が担っているのです。
そのため、大企業においては、この公認会計士による監査が義務付けられており、対象となる企業は公認会計士が監査したという証明書(監査報告書)を添付して、株主等に対して公表することが求められています。
公認会計士になるには?
公認会計士の資格を得るためには、2段階形式(短答式試験、論文式試験)で実施される公認会計士試験に合格する必要があります。
また短答式試験と論文式試験に合格するだけでは、正式な資格取得はできず、2年の実務経験や実務補習の要件を満たす必要があります。
実務経験や実務補習の要件を満たしたうえで、最後の関門である修了考査試験に合格することができれば、晴れて公認会計士の資格を得ることができるようになります。(公認会計士協会では、論文式試験合格者を「準会員」と呼び、修了考査合格後の人を「会員」と呼び区別されています。)
なお、公認会計士試験の受験要件には、大卒や大学院卒などの条件はなく、誰でも受験することが可能です。
受験生には大学生が多く専門学校とのダブルスクールで勉強するケースや、大卒後に会計大学院に通って公認会計士試験の合格を目指すケースなどがあります。
税理士との違いは?
公認会計士が「会計」の専門家なら、税理士は「税金」の専門家です。
税理士は「税務の代理、税務書類の作成及び税務相談」を独占業務としており、企業や個人が国や地方公共団体に納付する税金額を計算する代理やアドバイスをする税務関連業務を主な業務としています。
公認会計士が主に大企業を顧客としているのに対し、税理士は会計や税金の知識が乏しい中小企業や個人事業主などを主な顧客としてるといった違いもあります。
資格 | 独占業務 | 主な仕事内容 |
---|---|---|
公認会計士 | 財務諸表の監査 | 大企業等の決算書の監査など |
税理士 | 税務の代理、税務書類の作成及び税務相談 | 中小企業等の税務申告の代理など |
公認会計士を目指すメリットは?
年収が高い
まず挙げられるメリットは年収が高いという点です。
厚生労働省の『賃金構造基本調査』(令和2年)では公認会計士・税理士の平均年収は、958万4,200円とされています。
全労働者の平均年収は478万2,900円ですので、難関資格だけあって一般に比べると十分に高く魅力的なメリットと言えるでしょう。
監査法人に勤める場合、初任給は30万円前後、年収は500万円前後からスタートします。
残業量や賞与にも左右されますが、監査法人勤務7年~10年経過時には、1,000万円前後に到達するともいわれています。
一般企業の役員にもあたるパートナーと呼ばれる職位に昇格できれば平均年収は2,000万円以上とも言われており、高収入が得られる機会は多くある点も公認会計士を目指すメリットの一つです。
社会的ステータスが高い
公認会計士は、医師、弁護士と並ぶ三大国家資格の一つです。難関国家資格としても広く認知されており、周囲の人間から信頼を得やすいというメリットを感じる機会は多いことでしょう。
普通の会社員であれば転職の際などには、自分自身の能力や価値を知ってもらうためには、これまでの経歴や業務経験などを事細かに説明する必要があるはずです。
一方で、公認会計士の資格があれば、その資格を持っているということだけで一定の評価を受けられることも少なくなく、社会的な信頼度の高さは大きなメリットの一つ。
また、ビジネスの場はもちろんですが、生活のなかでも住宅ローンを組む際などにも、融資限度額や金利面で優遇されることも多いです。
若い年代でも好条件で住宅ローンを借りることができるという実利的なメリットもあります。
キャリアパスが豊富
キャリアパスの豊富さも公認会計士を目指すメリットの一つです。
公認会計士試験合格者の多くは監査法人と呼ばれる公認会計士の会社で、独占業務である監査の仕事からキャリアをスタートさせます。
しかしながら、公認会計士の活躍フィールドは監査法人に限られず、一般企業の経理、コンサル、投資ファンドなど幅広い仕事の選択肢を有しているというメリットがあるのです。
実際に監査法人に勤めている公認会計士も、入所後5年~10年すると徐々に外の世界に羽ばたき、新たな仕事を求めて転職する人や独立する人などが増えていきます。
幅広いキャリアパスのなかから自身に有ったキャリアを選択して、自ら道を切り拓いていきたいという人にはメリットの大きい資格と言えるでしょう。
独立開業ができる
税理士などと同様に独立開業や起業がしやすいというのも公認会計士の大きなメリットです。
公認会計士の資格があれば独立して会計事務所を開業することも難しくはありません。
独立のメリットとしては、自分で仕事や働き方を選ぶことができる点や年収アップが期待できる点などが挙げられます。
一般に独立した公認会計士の方が高年収を得ている場合が多いといわれており、独立した公認会計士は数千万円の年収を得ている人もざらに存在します。
また、独立した場合には仕事の成果は全て自分のものとして、頑張れば頑張った分だけ収入のアップとして返ってくる点も独立が選ばれる際の理由の一つです。
女性も働きやすい
公認会計士の仕事は実力主義の世界で、性別、学歴や職歴によって出世・昇進や給与等の待遇に差が出ることはあまりないと言われています。
監査法人などは女性の働く環境の整備にも力を入れており、産休や育休制度などはもちろん育児のための時短勤務などの制度も充実しており、女性が働きやすい環境が整っています。
男性と同じように働きたい、産休や育児で一時的に仕事を離れても、また同じように働きたいという女性の方には公認会計士はおすすめの仕事の一つです。
資格の価値・メリットは?
公認会計士の資格を取得するのは簡単ではありません。
難関試験を突破しなければならないほか、資格取得には実務経験も必要となるなど、相当な労力と時間を費やす必要があります。
公認会計士は、その費やされる労力と時間に見合ったメリットや価値がある魅力的な資格なのでしょうか。
自分に合っているかが最も重要
公認会計士を目指すメリットは、年収が高い、社会的ステータスが高い、キャリアパスが豊富、女性も働きやすいなど様々あることをご紹介させて頂きました。
しかしながら、公認会計士を目指す価値があるのかどうかは、公認会計士の仕事内容や資格から得られるメリットがその人に適しているかどうかによって人それぞれで異なるでしょう。
例えば、公認会計士は数字を扱う機会が非常に多い職業ですが、数字が苦手だという人にとっては、苦労してまで資格を取得する価値は少ないのかもしれません。
では、公認会計士の資格を目指すのに適しているのはどんな人なのでしょうか。
公認会計士を目指すのに適している人
公認会計士を目指すのに適している人の特徴は次のとおりです。
- 数字に強い人
- 倫理観や正義感の強い人
- 年収や社会的ステータスを重要視する人
- 安定した仕事を求めている人
- 多様な仕事の選択肢を確保したい人
- 独立開業を目指す人
- 大学生に通学中など試験の勉強時間を確保できる人
公認会計士を目指すのに向いていない人
公認会計士を目指すのに向いていないと思われる人の特徴は次のとおりです。
- 数字を扱うのが苦手
- 試験や勉強が苦手な人
- 試験のための勉強時間が確保できない人
税理士や行政書士にも登録可能
また、公認会計士の資格の価値の一つとして、税理士や行政書士にもなれる点が挙げられます。
公認会計士の資格を持っている場合、試験を受けることなく税理士や行政書士の資格にも登録することができるです。(税理士や行政書士の資格を持っていても、公認会計士に試験なしで登録することはできません。)
独立開業を目指す場合などは、中小企業や個人事業主を顧客とすることが多い税理士や行政書士の業務を行えることは、大きな強みの一つといえます。
実際に独立をする公認会計士のなかでも、税理士登録を行い税理士業務を中心業務に据えて独立開業する人は多いです。
公認会計士も税理士の仕事もできるという点は、公認会計士の資格の大きんメリットの一つです。
公認会計士の将来性は?
公認会計士試験を目指すメリットを考える場合、公認会計士の仕事や資格の将来性は気になる点でしょう。
こちらでは公認会計士の将来性についてご紹介いたします。
現在は人手不足の状況
公認会計士業界は最近5年~10年ほどの間にわたって人手不足が叫ばれる状況が続いています。
今後も早期の解消を望むのは難しいと言われており、これから公認会計士を目指す人でも、基本的には売り手市場での就職活動が可能と見込まれています。
この人手不足の背景には、公認会計士が行う監査の仕事内容の増加があります。
公認会計士の本業である財務諸表監査ですが、近年は会計基準の複雑化や監査品質の向上などの影響により監査業務の需要が年々増加しているのが実態です。
企業の粉飾・不正会計の手法の複雑化や大規模化により、米国や欧州をはじめ監査業務に要求される項目は増加傾向にあり、クライアント企業から受け取る監査報酬の水準も増加傾向となっています。
これらを背景として、監査法人などでは人手不足が叫ばれる状況が続いており、今後も公認会計士に対する需要はますます増加していくことが予測されています。
近年、活躍の機会は広がりつつある
近年、公認会計士の活躍フィールドは監査以外の仕事にも広がりをみせています。
- コンサルティング業務
- 環境分野
コンサルティング業務
公認会計士は企業のビジネスや会計、内部管理などに対する専門知識を有していることから、コンサルティングの仕事のニーズは高まってきています。
2022年には、コロナにより資金繰りや増大する債務に苦しむ中小企業の収益力改善・事業再生・再チャレンジを促す総合的な支援策として中小企業活性化パッケージというものが公表されております。
この中小企業活性化パッケージにおいても、公認会計士は会計の専門家として中小企業の経営再建を支援する役割を期待されており、監査業務以外でも公認会計士の活躍機会は広まりを見せています。
環境分野
また、世界的にもESGやサスティナブルへの対応が強く要求されるなか、新しい会計領域として環境会計と呼ばれる領域なども生まれています。
環境会計とは、企業が行った環境保全にかかった費用や削減効果などを具体的に数値化する比較的新しい会計概念です。国際的にも環境に配慮した経営、事業活動が求められており、企業も環境への対応を数値化して外部に公表することが必要となりつつあります。
この新しい環境分野においても、環境会計の監査など公認会計士の専門的な会計知見による活躍が期待されています。
そのため、グローバル企業をはじめ各企業においてESGやサスティナブルへの対応は無視することのできない分野となっており、公認会計士の活躍領域はますます増加することが期待されます。
まとめ
本記事では、公認会計士の資格に興味を持っている方向けに、公認会計士試験を目指すメリットや公認会計士の将来性について詳しく解説をさせて頂きました。
公認会計士は、医師、弁護士に並ぶ三大国家資格の一つであり難関試験ですが、年収面や社会的ステータス、キャリアパスの豊富さなど様々なメリットがあることご紹介しました。
また、公認会計士の将来性として、公認会計士が担う仕事は増加傾向にあり公認会計士の活躍フィールドは近年広がっていることをご紹介しました。
本記事で紹介した公認会計士の資格の様々なメリットや将来性をしっかりと押さえたうえで、公認会計士の資格が自分に向いていると感じられるのであれば、公認会計士試験を目指してみるのもよいでしょう。