公認会計士の平均年収

税理士・弁護士とならぶ国家資格として有名な「公認会計士」。
独学ではなかなか合格が難しい試験で、合格率も低いです。専門職ということもありその分高収入というイメージですが、実際はどの程度なのでしょうか?
実は、各職業の年収については政府(厚生労働省)が毎年「賃金構造基本統計調査」という調査を行い、結果を公開しています。それを元に、公認会計士の平均年収(賞与を含む)を計算してみました。
2017年 | 2018年 | 2019年 | 平均 | |
---|---|---|---|---|
公認会計士・税理士 | 1042万円 | 892万円 | 684万円 | 873万円 |
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成29年~令和元年 / 2017年~2019年)
直近3年間の統計結果から見える公認会計士の平均年収は、約873万円。
同じく厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和元年/2019年)で日本の大企業の給与を確認すると、基本月給だけで年収464万円。ボーナスも含めると、大企業の平均年収は約600〜650万円ほどになると予想されます。
これを見ると、一般的な企業と比べて公認会計士の年収は比較的高いと言えるでしょう。
ただし、これはあくまで多くの方が勤めるであろう100〜999人規模の法人に詰めている公認会計士のデータをまとめたもの。実際は、公認会計士としての経験年数や勤務先の法人規模・業界などによって年収が変わってきます。
そこで、公認会計士の年収をもっと詳しく見たいという方のために2019年度の統計データを性別・法人規模別にまとめました。
※政府の統計データでは公認会計士と税理士のデータがまとめられていますので、若干のずれがございます。
女性・男性/会社規模で収入を比較
政府の統計データを元に公認会計士の年収について、年齢/性別/法人規模別 に収入をまとめてみました。以下がその内容となります。
※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和元年データより
法人規模 | 1000人以上 | 100~999人 | 10~99人 | ||||||
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基本月給(万) | ボーナス等(万) | 年収 | 基本月給(万) | ボーナス等(万) | 年収 | 基本月給(万) | ボーナス等(万) | 年収 | |
男性 | 56.5 | 178 | 856 | 62.2 | 135 | 881.4 | 454.2 | 1216.7 | 6667.1 |
〜19歳 | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
20〜24歳 | 39.5 | 443 | 917 | - | - | - | 21.3 | 62.1 | 317.7 |
25~29歳 | 48 | 120.5 | 696.5 | - | - | - | 31.1 | 63.2 | 436.4 |
30~34歳 | 55 | 161.8 | 821.8 | - | - | - | 51 | 110.3 | 722.3 |
35~39歳 | 60 | 171.2 | 891.2 | - | - | - | 45.3 | 89.2 | 632.8 |
40~44歳 | 59.5 | 249.2 | 963.2 | 62.2 | 135 | 881.4 | 54.6 | 209.9 | 865.1 |
45~49歳 | 58.9 | 230 | 936.8 | - | - | - | 41 | 90.6 | 582.6 |
50~54歳 | 49.8 | 87.8 | 685.4 | - | - | - | 45.1 | 263.7 | 804.9 |
55~59歳 | - | - | - | - | - | - | 51.2 | 132 | 746.4 |
女性 | 52.9 | 132.7 | 767.5 | 59.8 | 175.4 | 893 | 30.4 | 57.3 | 422.1 |
~19歳 | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
20~24歳 | 34.3 | 64.2 | 475.8 | - | - | - | 18.4 | 74.4 | 295.2 |
25~29歳 | 40 | 35.7 | 515.7 | - | - | - | 23.9 | 77 | 363.8 |
30~34歳 | 56 | 108.6 | 780.6 | - | - | - | 27.3 | 35.7 | 363.3 |
35~39歳 | 55.3 | 157.8 | 821.4 | - | - | - | 22.3 | 52.1 | 319.7 |
40~44歳 | 49.1 | 162.9 | 752.1 | - | - | - | 39.6 | 92.9 | 568.1 |
45~49歳 | - | - | - | 59.8 | 175.4 | 893 | 35.5 | 50.4 | 476.4 |
50~54歳 | - | - | - | - | - | - | 25.9 | 46.7 | 357.5 |
55~59歳 | - | - | - | - | - | - | 22.4 | 41.8 | 310.6 |
※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和元年)のデータを元にしていますが、特に100人~999人規模の調査結果に偏りがあるため、あくまで参考として御覧ください。
上記のデータから公認会計士の収入について分かることをまとめてみると以下の通りです。
- 月給与/ボーナスともに基本的には年齢に比例して上がる
- 法人規模が大きい会社のほうが年収が高い
- 女性よりも男性の方が年収が高い
2019年度のデータでは、中小企業も含めた公認会計士全体の平均年収は男性で約768万円、女性で約509万円。
しかし、特に99人以下の小規模な法人になると、男性・女性ともに年収は一般企業とあまり変わらない金額になります。
一方、1,000人以上の大規模な法人の場合、男女ともに年収が高いことが見て取れます。男女ともに、年収700〜800万を超えてくるのが30代。40代にもなると、男性では1,000万円近くの年収になります。
なお、1,000人以上の法人に勤める公認会計士のキャリア初期(20〜24歳あたり)の年収は大体400万〜500万円。これは他の業種の初任給と比較するとかなり高いです。
このように、大規模な法人に勤める公認会計士にもなると、若い時から高年収になりますね。一方、中~小規模の法人では、一般的な企業と大きく変わらない年収になります。
法人規模によって年収が大幅に変わるのが、公認会計士の年収の特徴とも言えるでしょう。
勤務先によって異なる公認会計士の収入

ここまで説明した通り、公認会計士の年収は勤める会社によって大きく変わります。
ここでは公認会計士の方々の働き先ごとにどの程度の年収が見込めるかをそれぞれ見ていきたいと思います。
4大監査法人
日本の4大監査法人とは「EY新日本」「トーマツ」「あずさ」「PwCあらた」です。この4社は、公認会計士資格を取得した多くの方が目指す大手の監査法人です。
求人サイトの口コミを見てみると、在籍年数7〜10年の方で大体800〜1,200万円の範囲に収まる年収をもらっているようです。また、年収1,000万円を超える方たちは、マネージャーなどの管理職に就いていることが分かります。
ちゃんと勤め上げれば900万円は堅いと考えると、大手監査法人は公認会計士の勤め先として一番の候補と言えるでしょう。
一般的な監査法人の年収
次に、EY新日本やトーマツなどの4大監査法人以外の、一般的な監査法人に勤めた場合の年収について見ていきましょう。
通常、公認会計士試験に合格した後は監査法人に就職し、そこで業務補助を行いながら実務補修所に通うことになります。そして、最後に「修了試験」に合格してやっと正式に公認会計士として認められます。
修了試験に合格するまでの初任給は約480万円(残業代抜き)で、残業代を合わせると多い人で600万円になります。
監査は専門性の高い分野なので一般事業会社の新入社員よりはやはり高い金額となっています。
先ほどの厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和元年)では、データの数が非常に少ないものの、100人~999人規模の法人に勤める40代男性で年収800万円以上。一般的な監査法人はこれくらいの規模の法人があたることが多いので、目安としては40代で年収800万円と考えておくと良いでしょう。
以前はリーマンショック後の経済低迷により公認会計士の平均年収が下がったこともありますが、現在は景気が大きく動くこともなく、安定傾向にあります。
4大監査法人でなくとも、公認会計士として監査法人に勤めた場合の給与は魅力的だと言えるでしょう。
一般事業会社等の年収
最近では、金融庁の後押しなどもあり、公認会計士試験合格後1年目から一般事業会社に就職する人も増えてきています。
公認会計士は専門的知識を有しているため、新卒で就職する社会人よりは多少給与面でも考慮されるということもあり、通常の社会人1年目よりも高い年収が見込まれます。
また、監査法人に勤めたあとで一般事業会社に転職する場合は、日系・外資を問わず転職先として様々なケースがあるため、年収の幅も大きく異なります。
一概に言えませんが、金融業界、コンサルティング業界、アドバイザリー業界に進んだ場合は、給与の面で高くなる傾向があります。公認会計士資格で給与面を優遇される可能性もあるでしょう。
また、海外の企業に転職した場合にも、年収アップを期待できるケースが多いようです。
しかし、これらの業界は激しい実力社会なので、やりがいは大きいですが激務となる場合が多く覚悟が必要です。
一方、他の事業会社に転職した場合は、給与は監査法人と同程度か、あるいは若干低い傾向にあるようです。しかし、公認会計士からの転職は管理職待遇で採用される場合が多く、時間面では公認会計士時代よりも余裕ができ休みもとれる場合が多いです。
そのため、公認会計士として働く監査法人よりも、一般企業に就職・転職をする方に魅力を感じる人もいます。
公認会計士として独立開業した場合の年収
以前は監査法人に5~10年ほど勤めてから、公認会計士として独立開業する方も多く見られました。
今でも独立開業をする公認会計士の方は多く、個人で会計事務所を立ち上げたるケースが一般的です。
その場合、多くが税務業務やコンサルティング業務、監査業務を行っています。お客さんを自分で獲得しなければならず、年収は自分の努力と公認会計士としての実力次第になってきます。
金額はピンキリですが、頑張れば1,000万円台も夢ではなく、高い人では3,000万円台に達する場合もあります。
ベンチャー企業で働く
中小企業の中でも、特に上場を目指しているベンチャー企業の経理専任として働くと、高額の年収が期待できる可能性があります。
ベンチャー企業からしても、公認会計士資格を持ったバックオフィスリーダーがいると心強いですし、役員やCFOとしてのキャリアもあるかもしれません。その場合の年収は、経営状況が良い会社であれば1,000万円前後は十分考えられます。
上場した際の報酬なども期待できますし、何より勢いのある会社のメンバーの一員として働くことは、それだけでやりがいにもつながります。やる気がある方には、とてもおすすめの選択肢です。
経営コンサルティング会社で働く
公認会計士で培った財務知識や経営分析の能力を生かして、経営コンサルなどを事業として行っているコンサルティング会社で働く選択肢もあります。
公認会計士ということで優遇される可能性もありますし、順調にマネージャーまで昇格すれば30歳前後で1,000万円を超えるキャリアも十分に考えられます。
経営コンサルティング会社は公認会計士の転職先として人気があるため、数年間公認会計士としてキャリアを積んでから転職するという選択肢も良いでしょう。
職業別の給料の違いまとめ

一般的な企業と比較して年収の高い公認会計士ですが、他の職業と比較した場合にはどうなのか見てみましょう。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和元年) 職業別男女計年収
順位 | 職業 | 平均年収 (万円) |
平均年齢 |
---|---|---|---|
1位 | 航空機操縦士 | 1,695 | 39.4 |
2位 | 医師 | 1,169 | 40.7 |
3位 | 大学教授 | 1,101 | 57.7 |
4位 | 大学准教授 | 872 | 47.8 |
5位 | 記者 | 792 | 39 |
6位 | 不動産鑑定士 | 755 | 46.6 |
7位 | 弁護士 | 728.6 | 40.1 |
8位 | 大学講師 | 719 | 43.7 |
9位 | 高等学校教員 | 709 | 43.7 |
10位 | 一級建築士 | 702 | 48.6 |
11位 | 公認会計士・税理士 | 684 | 42.7 |
12位 | 自然科学系研究者 | 681 | 39 |
表を見てみると、どの職種も国家試験の突破や、専門的な学術スキルが必要になる専門職が多いです。
公認会計士も、例に漏れず試験が難しく取得難易度が非常に高い国家資格。医師や弁護士などより下とはいえ、これはあくまで2019年の統計データなので、年によって順位が変わります。
例年、年収ランキングは公認会計士は上位に位置しているため、一般的にみて「高収入」という職業にされるのは間違いありません。
また、参考として、全国の平均年収と比較してみましょう。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2019年)によると、平成30年の男女合わせた全国の平均月額賃金は約31万円。これにボーナスを合わせると、一般的なサラリーマンの平均年収は400万円~500万円程度と考えられます。
つまり、一般的な平均年収と比べると、公認会計士は100万円以上も多くの収入が期待できると言えます。
特に、4代監査法人に勤めるとなると、1,000万円近い年収も期待できるため、高い年収の職業に就きたいという方には、有名な監査法人に勤めることをおすすめします。
女性にとっても給与面・キャリアの面で魅力的
公認会計士という職業は、女性にとっても給与面、働き方の面で魅力的です。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和元年)によると、女性の公認会計士の年収(全年齢平均)は約509万円。
同資料で公開されている女性の平均月額賃金が24.8万円なので、一般的な女性の年収はボーナスを含めると350~400万円が現実的な年収と推測されるでしょう。
この数字を比べると、公認会計士として活躍する女性の給与は平均よりも高い年収を得ていることがわかります。
また、難しい資格試験をクリアして手に職を持っているという面から、結婚・出産などのライフイベントに合わせながら長く働きやすいというのも女性の公認会計士の魅力の1つ。
出産後に公認会計士として復職したり、パートやアルバイトで育児と両立しながら仕事をしたりと、多彩なワークスタイルを確立できるため、年収以外の面でも人気を集めています。
気になる税理士の年収事情

公認会計士とよく比較される職業が税理士。
同じ会計資格で国家資格とうこともあり、資格取得の際はよく迷われる人が多いです。
上記、「職業別年収ランキング」の比較で見ても分かるように公認会計士と税理士は同じ部類で掲載されていますが、一体どっちのほうが年収は高いのか。
とは言っても、公認会計士は税理士に無試験で登録できるため、両資格を所持している人も多く線引きは難しいところ。
したがって、一般的な税理士の年収ケースで紹介していきたいと思います。
BIG4税理士法人
BIG4と呼ばれる監査法人で有名なDTT(デロイト・トウシュ・トーマツ)、KPMG、Pwc(プライス・ウォーターハウス・クーパース)、EY(アーンスト・アンド・ヤング)の世界最大規模の4大会計事務所は、税理士法人も有しています。
勤務する税理士法人先としては最も規模が多く、また就職するのも非常に困難なことで有名。
クライアントは大手上場企業から外資系企業が中心であるため、英語力も必須の税理士法人です。
選ばれた税理士だけが勤務できるため、平均年収はやはり高額で約800万円と言われており、1000万円を超えてくる人も多いのが特徴。
中小税理士法人
税理士で最も多いのが中小規模の税理士法人で働くケースです。
年収は、税理士法人の規模と役職によって大きく異なってくるので一概には言えませんが、地方の税理士法人なら平均300万円という年収の税理士もいます。
クライアントや個人が多いと顧問料も低くなりがちなため、税理士であっても年収は下がり気味。
いっぽう、法人を顧客に持つ税理士法人であれが、その分顧問料も期待できるため、年収もそれなりに期待できるでしょう。
とは言っても、BIG4等と比較すると年収は低い傾向にあり、平均400万円から600万円程度になると思っておいて良いでしょう。
独立開業
税理士法人で経験を積んで独立開業を目指す人が多いのは公認会計士と一緒です。
実力次第では、年収1000万円以上を稼ぐ税理士も多く、近年はIT知識やマーケティングスキルなど会計知識に捉われない総合的なスキルや知識がある税理士が強いのが特徴。
いっぽう、記帳代行など従来通りの運営を行っている会計事務所は、RPAやクラウド会計の誕生などで仕事が淘汰されつつある二極化が進んでいます。
税理士の平均年収
データは少し古いですが、平成26年に日本税理士会連合会が実施した「第6回税理士実態調査」で税理士の平均年収が公表されているので下記まとめておきます。
公認会計士の年収と比較しながら、これから資格取得を目指す人はどちらのキャリアを選ぶか参考にしてみると良いでしょう。
区分 | 平均年収 |
---|---|
補助税理士(勤務税理士) | 597万円 |
社員税理士 | 886万円 |
開業税理士 | 774万円 |
※開業税理士の場合、2000万円以上の平均年収が5.4%いる一方で、年収500万円以下の税理士が48.1%もいたことから二極化が進んでいることが分かります
新型コロナによる会計士の年収への影響は?
2020年は新型コロナの影響で、非常事態宣言が4月に発令し、経済が一時停滞しました。
5月以降に非常事態宣言は解除されましたが、まだまだ本格復帰の見通しは遠く、冬にはまた感染が広まり再度非常事態宣言が発令される可能性も残されています。
そんな中、多くの企業では収益が低下し、特に航空・観光・飲食産業は非常に厳しい環境に直面。
したがって、士業に強いと言われている公認会計士においても無傷では済まない人が多いかもしれません。
特に事業会社で活躍する公認会計士は、業種によっては賞与カットも覚悟しないといけないでしょう。
また、監査法人に勤務する公認会計士でさえ、クライアントの業績が悪化すれば報酬を上げることもできず、リーマンショックの頃のように、人員削減、採用縮小などの対応を図ることも。
公認会計士の年収アップの方法は監査法人からの転職によるステップアップが主流ですが、新型コロナの影響が長期化すれば、売り手市場だった公認会計士も買い手市場へ変わる可能性があります。
まとめ
今回は、公認会計士の年収について解説してきました。
公認会計士は難易度の高い国家資格という面もあり、全国平均よりも高い年収を見込める職業です。4大監査法人ともなれば、30代で1,000万円の年収も夢ではありません。
もちろん仕事のやりがいは給与面だけではありませんが、頑張って試験を突破した分しっかりとリターンを見込めるのは公認会計士の大きな魅力と言えるでしょう。
公認会計士を目指している方は、ぜひ就職後の給与面も頭に入れながら試験勉強や就職活動をしてみて下さい。