仕事と両立しながら社会人でも公認会計士になれる?
公認会計士資格を取得してキャリアアップや転職を考えている社会人は少なくありません。
しかし、仕事をしながら国家資格の公認会計士試験に合格できるだろうかという不安も強いようです。
そこで今回は、公認会計士試験での社会人の合格状況をはじめ、仕事と勉強を両立させる効率的な勉強法や合格実積の豊富な資格予備校を紹介していきます。
まずは社会人の試験合格率・合格者状況知る
公認会計士試験の受験資格は学歴、職歴、年齢を問わないため、高卒生や社会人の受験者が年々増加傾向にあります。
では、社会人の合格率はどれくらいでしょうか。
公認会計士・監査審査会が発表した「令和3年公認会計士試験結果」によると、願書提出者総数が14,192人で最終合格者数は1360名。合格率は9.6%でした。
合格者の職業(属性)についての統計を見てみると下表のようになっています。
なお、社会人には一般に教員や公務員なども含まれますが、ここでは「会社員」に絞って説明していきます。
【令和3年度(2021年度)】公認会計士試験受験者・合格者状況
区分 | 願書提出者 | 合格者 | 合格率 | 合格者構成比 |
---|---|---|---|---|
学生 | 6,122名 | 808名 | 13.2% | 59.4% |
無職 | 2,319名 | 228名 | 9.8% | 16.8% |
専修学校・各種学校受講生 | 1,234名 | 116名 | 9.4% | 8.5% |
社会人(会社員) | 2,529名 | 111名 | 4.4% | 8.2% |
※「令和3年公認会計士試験結果」の「職業別合格者調」より一部抜粋
社会人の最終合格者数は111名で合格率は4.4%です。合格者構成比を見ると、学生、無職、受講生のいわゆる受験専念組で84%以上を占めています。それに対して
社会人は8.2%ですから、仕事と受験勉強を両立させることの難しさを表しているといえるでしょう。
しかし、社会人の受験者数と合格者数の過去5年間の推移は以下のようになっています。
社会人の受験者も合格者も毎年、コンスタントに出ているところからわかるように、決して公認会計士は社会人に不可能な資格試験ではありません。
仕事と受験を両立させなければならない社会人受験生は、いかに時間の効率化と学習の効率化を図って挑戦できるかが合格のカギとなってきます。
社会人受験生の直近5年間の推移
社会人 (会社員) |
2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 |
---|---|---|---|---|---|
願書提出者 | 2193 | 2254 | 2362 | 2490 | 2529 |
合格者数 | 106 | 86 | 83 | 95 | 111 |
合格率 | 4.8% | 3.8% | 3.5% | 3.8% | 4.4% |
合格者構成比 | 8.6% | 6.6% | 6.2% | 7.1% | 8.2% |
公認会計士試験の出題科目と免除制度について
医師、弁護士と並んで三大国家資格と言われる公認会計士。医師や弁護士に比べると短時間で合格できるといわれますが合格率は例年10%前後です。
2021年は10%を切って9%台に下がりました。
そんな難関試験ですが合格に関していくつかルールが設けられており、効率の良い対策を立てれば社会人でも短期合格を実現できる試験です。
ここからは公認会計士試験の試験概要について説明していきます。
公認会計士試験は2段階方式
公認会計士の試験は、短答式試験(マークシート式)と論文式試験(記述式)の2段階に分かれています。
試験日程は、短答式は12月と5月の年2回行われます。論文式は年1回、8月に3日間にわたって実施されます。
短答式試験は、論文式試験を受験するのに必要な知識を取得しているかどうかを見るもので、短答式試験に合格した人だけが論文式を受けることができます。
論文式は、実践的な思考力や判断力が備わっているかどうかを判定する試験で、じっくり考えて論証する問題が出されます。
なお、短答式でも論文式でも不合格になった場合、再受験しやすくなるように免除制度が設けられています。次に試験科目と免除制度についてまとめてみましょう。
短答式試験
財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の4科目。
ただし、財務会計論は簿記と財務諸表論から構成されているため、実質5科目とされています。
◆免除制度
短答式試験に合格した場合、申請をすれば短答式試験合格後2年間にわたって短答式試験の免除を受けることが可能。
つまり、短答式試験に合格したが論文式試験に落ちたという場合には、2年間のあいだは論文式試験から再チャレンジできます。
論文式試験
会計学、監査論、企業法、租税法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学から1科目を選択)
ただし、会計学が簿記及び財務諸表論、管理会計から構成されているため、実質7科目。
◆免除制度
全体として合格点に達していなかった場合でも、試験科目のうちの一部の科目について公認会計士・監査審査会が相当と認める点数を取った科目に対して、「公認会計士試験論文式試験一部科目免除資格通知書」が交付されます。
免除資格が交付された科目については、免除申請を行うことにより、2年間にわたって論文式試験の免除資格交付科目の試験について免除を受けることができます。
まず短答式試験をクリアするのがコツ
先ほど説明したように、短答式試験、論文式試験の両方に免除制度が設けられています。特に短答式試験に関しては、一度合格すれば向こう2年間は短答式試験が免除されます。
なかなか勉強時間がとれない社会人の方でも、まずは短答式試験に全力を注いで合格すれば、そのあと2年間の余裕が生まれるのです。
そのため、まずは短答式、その後に論文式と一極集中型で勉強すれば社会人の一発合格も夢ではありません。社会人の方は勉強時間の確保が難しい分、より合格しやすい方法で試験突破を狙っていきましょう。
公認会計士専門学校では、そういった試験突破に関する勉強方法の相談にものってもらうことができます。もし効率のよい勉強方法に悩んだときには、公認会計士専門学校の講師に相談してみましょう。
独学の勉強法も選択肢に入る?
社会人で公認会計士を目指している方の中には、公認会計士専門学校や資格予備校に通わず、独学で試験合格を目指している方もいるようです。
しかし、独学で合格できるほど甘くはありません。
公認会計士試験の問題が難しいというだけでなく、多くの勉強時間を確保しなければならず、忙しい仕事の合間にできるような勉強量ではすまないからです。
公認会計士試験の受験コースを開設している資格の学校TACによると、公認会計士試験に合格するためには、3,500時間の学習が目安とされているそうです。
もし2年間かけて公認会計士試験に合格するつもりなら、1日あたり少なくとも5時間は勉強しなければいけません。仕事を抱えるビジネスパーソンが毎日5時間も勉強時間に割くのは無謀ともいえます。
退職して勉強に専念するということができない社会人受験生が最重視しなければならないのは、効率性です。最短の時間で合格を果たすこと、それを目標にすれば独学という選択肢はあり得ないと言ってもいいでしょう。
社会人でも経理や税務関係の仕事に就いていて実務経験が豊富という方は別ですが、一から公認会計士試験に取り組むという社会人は、公認会計士専門学校や資格予備校に通って効率重視の受験対策が必須です
「通学」と「通信」で学習できる公認会計士専門学校
初めて公認会計士試験に挑む社会人は、「何から勉強してよいかわからない」「公認会計士の専門学校や資格学校に通いたいがその時間がない」という方が多いもの。
そのような方には通信制のスクールが最適ですが、「通信制で本当に力をつけられるだろうか」と迷う方もまた多いようです。
ここでは、社会人が仕事と両立させながら学べる公認会計士専門学校の「通学コース」と「通信コース」のメリット・デメリットを見ていきましょう。
公認会計士専門学校の「通学コース」
通学コースは講師との対面授業ですから、緊張感が緩むことなく勉強に集中できる点が最大のメリット。
仕事で疲れ気味の社会人にとって、緊張感を保てる学習環境は特に大切です。
疑問や不明点はその場で質問して解決できるのも対面授業ならではの利点です。
デメリットは、公認会計士試験の通学コースは2年間が一般的で、利用料金の相場はテキスト代なども含めて50万円~70万円とかなり高額であることです。
また、授業の始まる時間が決まっていますから、それに間に合わせるためには仕事のスケジュールを調整しなければいけません。
社会人にとって通学コースの最大のデメリットは「仕事と両立させるのが困難」という点です。
メリット | デメリット |
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公認会計士専門学校の「通信コース」
通信制はインターネットや衛星放送を活用した授業形態で、ネット環境が整っていてパソコンやスマホ、タブレットがあればどこでも利用することができます。
オンライン授業やweb授業とも言い、現在はほとんどの学校が導入しています。
公認会計士専門学校のオンライン授業の大きなメリットは、時間に縛られることがない点。
通学時間も節約でき、仕事が忙しくても帰宅後に時間を見つけて勉強を進めることができます。
自分のスケジュールに合わせて勉強できるのはメリットですが、なかなか勉強する習慣をつけることができない、刺激し合える良いライバルがいない分モチベーションを維持できないといったリスクを伴います。
メリット | デメリット |
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社会人におすすめの公認会計士専門学校・予備校はどこ?
学習効率が高くドロップアウト防止なら「クレアール」
社会人受験生の5~8割は学習プラン通りに勉強できず、途中でドロップアウトしているといいます。
それだけ公認会計士試験の出題範囲は膨大で、多くの学習時間を確保しなければ失敗に終わってしまうということです。
しかし、社会人は仕事の両立が前提であり、限られた時間の中で対策する必要があります。そんな厳しい状況に対応してくれるのがクレアールの公認会計士講座。
「非常識合格法」という独自のノウハウを基に学習効率が追求されているので、社会人でも無理なく勉強できるのが特長です。
クレアールはオンライン通信講座のみで、合格体験記には「仕事の隙間時間を有効活用して勉強しやすい」といった社会人受講生の声が多い資格専門学校です。
王道で行くなら「TAC」または「資格の大原」
公認会計士試験の合格者のほとんどはTACや大原学園(大原専門学校、資格の大原を含む)の受講生です。
最近はCPA学院も合格者数を伸ばしていますが、受講生は現役大学生が多いので、社会人で公認会計士専門学校選びをするならTACまたは大原のいずれかがおすすめです。
公認会計士講座は「通学」と「通信」から選択できるので、勉強のしやすさで決めるといいでしょう。
短答式突破を第一に考えるなら「LEC」
最後に、あまり費用をかけたくない、まずは短答式合格から目指すという方にはLECがおすすめ。
LECには短答式特化型のコースがあり、料金も他校に比べて割安です。
有名講師はCPA学院へ移籍してしまいましたが、現在も公認会計士講座はLECを代表する講座の1つ。
まずは腕試し感覚で公認会計士に挑戦してみたい社会人にもおすすめです。
まとめ
今回は、社会人の公認会計士試験事情からおすすめの専門学校・予備校まで紹介してきました。
社会人は、合格者数から見ると決して多くはありません。中には仕事を辞めて公認会計士試験に専念する人もいます。
しかし、社会人として仕事を続けながら公認会計士を目指すことは、不合格になったときのリスクヘッジになったり、就職・転職活動する際に経歴欄に空白部分を作らずにすむなどのメリットもあります。
自分と相性の良い公認会計士講座を探し、講座のカリキュラムと自分の学習プランに沿って勉強に取り組むことが社会人受験生にとって合格への最短ルートとなります。