公認会計士の修了考査とは

数ある資格試験の中でも最難関と言われる公認会計士試験。
やっと合格したと思っても、晴れて公認会計士として認められるには、実は試験突破だけでは十分ではありません。
公認会計士試験の合格者は、まず「公認会計士準会員」という肩書きが与えられます。正式な公認会計士として登録するには、会計監査業務に関する実務経験と、所定の実務補習所での座学の受講、そして最後に「修了考査」をクリアする必要があります。
今回この記事では、公認会計士試験合格後から修了考査クリアまでの流れを解説し、公認会計士として登録するまでの必要事項を丁寧に解説します。
試験合格~会計士登録までの流れ
会計士試験に合格後、公認会計士として登録するまでには、2年間の実務経験、3年間の実務補習所への通学を行った後、修了考査に合格しなければいけません。
実務経験と補習所通学は平行して行うことができるため、公認会計士試験合格後、最短3年で修了考査を受けることができます。
実務経験とは~監査法人・企業で2年間実務経験を積む~
公認会計士の登録に必要な実務経験とは、実際に監査法人や事業会社で財務に関する監査・分析の業務を行うことを指します。
具体的には、「業務補助」と「実務従事」の2種類があり、それぞれ業務は下記の用に定められています。
業務補助
- 監査証明業務に関して、公認会計士又は監査法人を補助すること。
(業務補助を行った証明として、監査法人等の代表者から「業務補助等証明書」を発行してもらう必要がある)
実務従事
- 国または地方公共団体の機関で、国・地方公共団体の機関などの会計に関する監査を行うこと。または、国税に関する調査もしくは検査の事務を行うこと。
- 金融機関や保険会社などで、貸付け、債務の保証もしくはそれに準ずる資金の運用に関する事務を行うこと。
- 国や地方公共団体、またはその他の法人で、原価計算やその他の財務分析に関する事務を行うこと。
実務経験を積む職場としては、監査法人や会計事務所、事業会社の経理、銀行などの金融機関や保険会社などが挙げられます。
そのため、公認会計士として登録するにはまずこういった就職先を探すことが第一歩といえるでしょう。
実務補習所とは~指定の補習所で3年間講義を受ける~
実務補習所とは、公認会計士として必要な知識や技能、素養を身につけるために通う場所です。
補習所は東京、東海、近畿、九州の4つのエリアに分けられ、平日の夜もしくは土日に授業が開講されます。
授業の内容は、会計、監査、経営、税務、法規・職業倫理、ITの(コンピュータ)に関する実務とされており、座学授業とWeb授業の2つで授業を受けることになります。
実務補習は単位制で、1年目~3年目でそれぞれ必要な単位を取得する必要があります。必須科目などもあるため、大学の授業のようなイメージが近いです。
また補習所では考査(試験)や課題提出もあるため、並行して行う実務経験も合わせると、なかなかハードなスケジュールで日々を過ごすことになるでしょう。
3年間の補習期間が終わり、必要な単位を取得している場合にはやっと修了考査を受験する資格を得られます。
修了考査とは~公認会計士の最後の関門~
2年間の実務経験、3年間の実務補習を問題なく完了すると、修了考査を受けることができます。
修了考査は毎年12月の日程で行われ、実務経験と実務補習所で学んだ理論・実務に関する試験が課されます。
出題されるのは、下記の5科目です。
- 会計に関する理論及び実務
- 監査に関する理論及び実務
- 税に関する理論及び実務
- 経営・IT(コンピュータ)に関する理論及び実務
- 公認会計士の業務に関する法規、および職業倫理について
合格基準は総点数の60%を獲得することとされており、それぞれ修了考査運営委員会が相当と認めた得点比率が基準となります。ただし、各科目で満点の40%に満たない科目が1つでもある場合には、不合格となることがあるため、注意しましょう。
実務補習所で学んだ内容がまとめて出されるため、実務補習での学習をまんべんなくしっかり定着させておく必要があります。
もし修了考査に合格できなかった場合は、公認会計士として登録することはできません。翌年に再度試験を受けなければいけなくなるため、時間も費用(受験料:28,000円)もかかります。できる限り1回で合格を目指しましょう。
修了考査に合格すると、やっと公認会計士として正式に登録をすることができます。
気になる試験難易度と合格率
公認会計士の最後の関門とも言える修了考査ですが、みなさんが気になるのは難易度と合格率ではないでしょうか。
せっかく公認会計士試験を合格したのですから、修了考査もスムーズにクリアしたいですよね。
一般的に、修了考査の難易度は公認会計士試験ほど高くはないと言われています。というのも、平均的な合格率として毎年60%~70%ほどの受験者が修了考査に合格しているため。
合格率が10%ほどと言われている公認会計士試験と比べると、修了考査の合格率は高いと言えます。
しかし、だからといって油断は禁物です。2019年度の修了考査試験では、合格率が48.8%と異例の低さを記録。半数以上の受験者が落ちたという結果に、修了考査の問題が難しくなったのでは等の憶測がされているような状況です。
このように、年によっては合格率が低いこともあるため、くれぐれも油断せずにしっかり復習をしてから修了考査を受けることがベストです。
勤務している監査法人によっては、修了考査のために試験休暇が与えられることもあります。また、勤務して3年目にもなると有給休暇を使うこともできるため、適宜試験日程に合わせて勉強時間を確保し、対策しましょう。
修了考査に失敗した場合は翌年に再試験を
修了考査は年に1回しか実施されないため、できることなら1回で合格することが最も望ましいです。
しかし、もし落ちてしまった場合でも翌年以降になにか大きなデメリットがあるわけではないので、あまり悲観することはありません。
一度修了考査に落ちても、翌年、翌々年と何度でも試験を受け直すことができるため、諦めずに合格を目指しましょう。
ただ、もう一度修了考査を受けるとなると、会社の業務の傍らまた自分で勉強を積んで試験を受けることになるため精神的にも肉体的にも負担がかかります。
それを考えると、やはりできるだけ1回で合格するのが良いでしょう。
不安な方は公認会計士予備校・専門学校で対策可能
どうしても修了考査を受けることに不安があるという方は、公認会計士予備校や専門学校で修了考査対策専用のコースを受講することもできます。
公認会計士試験の対策講座と同じ用に、教室でのライブ授業やWeb通信講座などで受講することが可能で、テキストや過去問を用いて修了考査の対策をすることができます。
しかし、対策コースに通うとなるとやはりそれなりの費用がかかってしまう点に注意。
修了考査対策コースを用意している「TAC」と「資格の大原」の授業料を見てみると、下記のようになっています。
TAC | 修了考査対策講座のみ 189,000円 (総合本科生 教室講座) |
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資格の大原 | 修了考査対策パックA 183,000円 (映像通学) |
修了考査の対策コースでも、15万円~20万円ほどの授業料がかかってしまいます。
反対に、きちんとお金をかけてしっかり勉強をすれば一回で合格できる可能性が高くなるわけでもあるので、自分の予算の余裕などを考えた上で検討してみてください。