公認会計士は監査業務や税務業務などを専門とする会計のスペシャリストです。
公認会計士試験に合格するために日々勉強している人も多いでしょう。
公認会計士は、高い収入が得られることや人材の需要が多いことなど魅力的な資格ではありますが、資格取得の難易度は高いです。
どのくらい高いのかを知るために「資格偏差値」があり、ほかの資格取得の難易度と比較してどのくらい難関なのかがひと目でわかります。
この記事では、公認会計士の資格偏差値がどのくらいなのかや、なぜ難易度が高くなるのかなどについて詳しく解説していきます。
公認会計士の難易度
公認会計士は日本における三大国家資格のひとつといわれており、資格取得の難易度(偏差値の高さ)も高いとされています。
公認会計士試験はどれくらい難しいのか、その難易度(偏差値の高さ)を知るために、公認会計士試験の合格率を確認していきましょう。
公認会計士の合格率は約10.6%
金融庁の発表によると、平成29年から令和3年の5年間における公認会計士試験の合格率は下表の通りで、平均合格率は約10.6%となっています。
公認会計士試験実施年 | 合格率 |
---|---|
2021年 (令和3年) |
9.6% |
2020年 (令和2年) |
10.1% |
2019年 (令和元年) |
10.7% |
2018年 (平成30年) |
11.1% |
2017年 (平成29年) |
11.2% |
合格率が約10.6%ということは、公認会計士受験者の10人に1人しか合格していないことになり、難易度が非常に高いといえます。
公認会計士以外の資格試験と比較
公認会計士試験の合格率は約10.6%と難易度が高いため偏差値も高いというイメージがあります。
しかし、ほかの資格試験の合格率と比較すると、公認会計士試験の合格率が特別に低いわけではないことがわかります。
公認会計士以外の難関資格試験の合格率を下表にまとめてみました。
資格試験名 | 合格率 |
---|---|
司法試験 | 41.5% |
税理士試験 | 18.8% |
国家公務員採用 総合職試験 |
11.8% |
日商簿記 検定1級 |
10.0% |
司法書士 | 5.1% |
(※2021年実施)
国家公務員採用総合職試験や日商簿記検定1級は合格率が10%前後となっており、司法書士においては約5%とさらに狭き門となっています。
また、やはり資格取得難易度が高いとされている司法試験の合格率は約42%とかなり高くなっており、「合格率の低さ=難易度の高さ(偏差値の高さ)」というわけではなさそうな結果です。
このように、資格試験の合格率は難易度を把握するためのひとつの目安にはなりますが、もっと偏差値が関係した難易度を知りたいものです。
そこで次章では、「資格偏差値ランキング」を参考にして公認会計士試験の合格に必要な偏差値を見ていきましょう。
資格偏差値ランキングからみる難易度
公認会計士の難易度を資格偏差値という観点から見ていきましょう。
資格偏差値とは、資格取得の困難さを高校や大学受験の際の偏差値のようにランク付けしたものをいい、ネット上でも資格偏差値ランキングを掲載しているサイトがいくつかあります。
資格偏差値ランキングを紹介する前に、まず「偏差値」とはどういったものなのか改めて解説しておきましょう。
偏差値とは
偏差値とは偏差の度合を表す値のことをいいます。
なお、偏差とは「平均値(標準値)からのかたよりやずれ」のことで、偏差値はその偏りやずれの度合をさします。
平均値を50とし、それよりも数値が高くなるほど偏差値が高くなり、反対に小さくなるほど偏差値も低くなります。
公認会計士の資格偏差値は「超難関レベル」
公認会計士の資格偏差値はどのように位置づけられているのか、いくつかの資格偏差値ランキングをもとにまとめてみました。
参考サイト | 公認会計士 偏差値 |
偏差値ランキング(順位) |
---|---|---|
サイトA | 77 | 1位(国家公務員総合職試験と同順位) |
サイトB | 77 | 1位 (国家公務員総合職試験、司法試験と同順位) |
サイトC | 75 | 1位 (国家公務員総合職試験、医師国家試験と同順位) |
サイトD | 74 | 2位 (医師国家試験と同順位) |
紹介した4つの公認会計士偏差値ランキングのうち、3つのランキングで1位となっており、資格偏差値が最上位に位置付けられていることがわかります。
なお、資格偏差値が2位となったランキングでも、1位は司法書士で偏差値が75なのでほとんど変わらないといえます。
参考までに、税理士の資格偏差値も紹介すると、75(Aサイト)や68(Cサイト)、72(Dサイト)などサイトによりまちまちですが、資格取得の難易度は公認会計士よりも低く位置付けられている傾向があります。
公認会計士試験の偏差値が高くなる理由
公認会計士試験の難易度が高くなる(偏差値が高くなる)のには、大きく4つの理由が関係しています。
なぜ偏差値が高くなるのかその理由を解説していきます。
公認会計士試験の偏差値が高い理由①:全科目を一度に合格しなければならない
公認会計士試験の難易度が高い(偏差値が高い)理由として、短答式試験では基本的に全科目を一度に合格しなければならないということがあります。
公認会計士試験は、まず短答式試験を受け、合格した人のみが論文式試験にすすむことができます。
しかし、公認会計士試験の短答式試験は原則として全科目を一度に合格しなければならず、この点が公認会計士の難易度(偏差値の高さ)を高くしている大きな理由となっています。
なお、以下の免除対象者に該当する人は短答式試験の特定の科目が免除可能です。
免除対象者 | 免除科目 |
---|---|
税理士 | 財務会計論 |
税理士試験 (簿記論および財務諸表論)合格者 |
財務会計論 |
国や自治体、大企業などで 会計・監査業務歴が7年以上ある人 |
財務会計論 |
会計専門職大学院で所定の科目で 一定の履修単位を取得した人 |
財務会計論、監査論、管理会計論 |
司法試験合格者 | 短答式試験免除 |
これらの公認会計士試験免除者に該当すれば所定の科目が免除されますが、該当しない人は全科目を一度に合格しなければならず、難易度(偏差値の高さ)が高くなるのです。
ちなみに、短答式試験と論文式試験は同じ年に合格する必要はありません。
短答式試験に合格すれば、2年間は短答式試験が免除されます。
公認会計士試験の偏差値が高い理由②:試験範囲が広く内容が難しい
公認会計士試験の難易度が高い(偏差値が高い)理由の2つ目として、試験範囲が広く内容が難しいということがあります。
公認会計士試験の試験科目は以下の通りです。
短答式試験 | 財務会計論、管理会計論、監査論、企業法(計4科目) |
---|---|
論文式試験 | 会計学、監査論、租税法、企業法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学の中から1科目選択)(計5科目) |
短答式試験の出題科目は、財務会計論、管理会計論、監査論、企業法の合計4科目があり、論文式試験では会計学、監査論、租税法、企業法、選択科目(経営学、経済学、民法、統計学の中から1科目選択)の5科目があります。
特に、短答式試験では非常に細かい点まで出題されるためインプットする知識の量が膨大です。
また、論文式試験では知識を暗記するだけでは不十分で、蓄積した知識を活かしてどのように解答に結び付けるかというアウトプットの勉強も合格には欠かせません。
すべての科目で所定の点数を取らなければ合格はできないため、苦手科目があると不利になるといえます。
公認会計士試験の偏差値が高い理由③:1次試験と2次試験の形式が異なる
公認会計士試験の難易度が高い(偏差値が高い)理由として、1次試験と2次試験の形式が異なるため、勉強方法が異なり合格のための対策が難しいということがあります。
【公認会計士試験:短答式試験】
1次試験は短答式試験が行われ、マークシートによる択一式問題となります。公認会計士に必要な基本的な知識を修得しているかどうか、幅広い分野から出題されます。
基準点は総得点の70%となりますが、40%未満の科目が1科目でもあると不合格になる可能性があります。
【公認会計士試験:論文式試験】
2次試験は短答式試験に合格した人が受けられるもので、公認会計士に必要な知識や応用力を身につけているかが問われます。基礎的な知識があるだけでは対応できず、実務でも役立つ判断・思考力が必要で、アウトプットの仕方の訓練が欠かせないのです。
基準点は52%ですが、40%未満の科目があると不合格になる可能性があります。
このように、短答式試験ではいかに基礎的な知識を修得できるかが合格のポイントとなり、論文試験ではそれらの基礎知識を生かして実践的な思考力が問われるため論文に向けての対策が別途必要になります。
公認会計士試験の偏差値が高い理由④:多くの勉強方法が必要
公認会計士試験の難易度が高い(偏差値が高い)理由として、膨大な勉強時間が必要ということもあります。
合格するために必要な勉強時間は、もちろん個人ごとに異なりますが、一般的に3,500時間~4,000時間は必要とされています。
短い場合でも2,500時間程度は必要で、数年かかって合格する人の場合は5,000時間以上勉要したというケースも。
そのため、1年で合格した人と2~3年で合格した人とでは勉強時間に大きな差が出ます。
3,500時間や4,000時間といわれてもイメージしづらいかもしれませんが、たとえば2年で公認会計士試験に合格する場合、1日5時間~6時間の勉強をする計算になります。
ちなみに、1年で合格を目指す場合は1日10時間以上の勉強が必要です。
このように、1年で合格するためには勉強漬けの毎日を送るか、2年で合格を目指す場合も毎日5時間以上の勉強が必要になります。
参考までに、公認会計士以外の資格に合格するための一般的な勉強時間についても紹介します。
資格名 | 勉強時間 |
---|---|
司法試験 | 3,000時間~(個人により大きく異なる) |
税理士 | 3,000~4,000時間程度 |
司法書士 | 3,000時間程度 |
国家公務員採用総合職試験 | 1,000~1,500時間程度 |
日商簿記1級 | 500~1,000時間程度 |
司法試験や税理士なども、合格のためには3,000時間程度の勉強時間が必要なことがわかります。
試験に合格するには高い学歴が必要?
公認会計士試験は、資格偏差値が最高位であるため学歴が高い人でなければ受験できないのかと不安な人もいるでしょう。
また、学歴はあっても偏差値が高くない高校や大学だった場合、合格できるのか心配な人もいるかもしれません。
そこで改めて、公認会計士試験の受験資格を確認しておきましょう。
公認会計士には受験資格は特にない
公認会計士では受験資格は特に決められておらず、年齢や性別をはじめ、学歴も関係なくだれでも受験することが可能です。
もちろん、出身高校や大学の偏差値も関係なく、公認会計士試験に合格できる実力があれば資格取得することができます。
なお、以前は受験資格が設けられており大学または短大卒業の人が対象となっていましたが、2006年度からの新試験制度導入時より中卒や高校卒の人も対象となっています。
ほかの難関資格試験では、ほとんどが受験資格が定められており、たとえば税理士は大学・短大卒または大学3年次以上の人や日商簿記検定一級保有者、会計事務所等に所定の年収以上勤務していることなど細かく決められています。
こういった要件なしで誰でも受験できるようになったことで、幅広い分野や年代からの人材を確保しやすくしているのです。
まとめ
公認会計士は、多くの資格偏差値ランキングで最高位の難易度となっており、合格することは難しい資格といえます。
しかし、学歴や年齢、偏差値不問でだれでも受験できるため、公認会計士を目指したい人に広く門戸が開かれているのはメリットです。